はじめに
「6月の住民税通知書を見て『こんなに引かれるの?』と驚いた」——そんな経験はありませんか。住民税は前年の所得をもとに計算され、6月から翌年5月までの12ヶ月で支払う仕組みです。給与の手取りが6月から減るのは、この切り替わりが原因です。
とくにシングルマザーの場合、ひとり親控除や寡婦控除が反映されていないと、本来より高い住民税を払い続けているケースがあります。通知書は専門用語が多く読みにくいですが、見るべきポイントは数か所だけ。6月の通知書チェックで控除モレを防ぐための手順を整理しました。
📊 この記事でわかること
- 住民税通知書のどこを見れば「控除モレ」がわかるか
- ひとり親控除・寡婦控除の違いと適用要件
- 住民税が想定より高い時の確認ポイントと修正手順
1. 6月に届く住民税通知書とは?基本の見方
個人住民税は地方税法に基づく税金で、市町村民税と道府県民税(東京23区は特別区民税と都民税)の2種類で構成されています。会社員・パートの方は6月ごろに勤務先から「特別徴収税額の決定通知書」が配布され、自営業の方は市区町村から「納税通知書」が届きます。
住民税は「均等割」と「所得割」の2つで構成されている
住民税の年税額は、次の2つを合計して決まります。
- 均等割:所得に関係なく一律で課される定額部分。標準税率は市町村民税3,500円+道府県民税1,500円=合計5,000円(令和5年度まで)。令和6年度(2024年度)以降は復興特別税1,000円分が終了し、代わりに森林環境税1,000円が国税として上乗せされ、合計負担額は同程度になっています
- 所得割:前年の所得に応じて課される部分。標準税率は市町村民税6%+道府県民税4%=合計10%(指定都市は市民税8%+道民税2%の構成)
つまり住民税は「均等割(年5,000円前後)+所得割(課税所得の約10%)」で決まります。所得割が課税される目安は給与収入で年収100万円超あたりからです(自治体により若干異なる)。
通知書で必ず見るべき4つの欄
住民税通知書は細かい項目が並んで圧倒されがちですが、シングルマザーがチェックすべき項目は次の4つに絞れます。
とくに大切なのは「所得控除」の欄です。ひとり親控除や寡婦控除がここに記載されていない場合、年末調整や確定申告で控除を申告し忘れている可能性があります。
2. シングルマザーが必ず使うべき2つの控除:ひとり親控除と寡婦控除
シングルマザーが住民税を抑えるうえで重要なのが、ひとり親控除と寡婦控除です。2020年の税制改正でひとり親控除が新設され、未婚のシングルマザーも婚姻歴の有無にかかわらず適用できるようになりました。
ひとり親控除の要件と控除額
ひとり親控除は、次の3つの要件をすべて満たす場合に適用されます(所得税法・地方税法)。
- その年の12月31日時点で婚姻していない、または配偶者の生死が不明であること(未婚・離婚・死別すべて対象)
- 生計を一にする子がいること(その子の総所得金額等が48万円以下)
- 合計所得金額が500万円以下
控除額は所得税で35万円・住民税で30万円です。シングルマザーで子どもがいて、合計所得金額が500万円以下であれば、ほとんどのケースで対象になります。
寡婦控除の要件と控除額
寡婦控除は、ひとり親控除に該当しない女性を対象にした控除です。次のいずれかに該当する場合が対象です。
- 夫と離婚した後再婚していない人で、扶養親族がいる、かつ合計所得金額500万円以下(子ども以外の扶養親族でも可)
- 夫と死別した後再婚していない人、または夫の生死が不明な人で、合計所得金額500万円以下(扶養親族は不要)
控除額は所得税で27万円・住民税で26万円です。「子どもがすでに独立して扶養から外れている」「離婚した母親と暮らしている」といった場合は、ひとり親控除ではなく寡婦控除の検討対象になります。
2つの控除の違いを表で整理
子どもがいる場合はまずひとり親控除が使えるかを確認しましょう。両方の要件を満たす場合は控除額が大きいひとり親控除が優先されます(同時併用不可)。
ひとり親控除の適用で住民税は30万円×10%=年間約30,000円の負担減になります。所得税分と合わせると、年収250〜300万円のシングルマザーで年間4〜6万円程度の節税効果が見込め、5年で20〜30万円の差です。
3. 住民税が「想定より高い」と感じたときの確認ポイント
「住民税が高すぎる」と感じたら、慌てずに次の順番でチェックしましょう。多くは控除の反映漏れか書類の記載ミスが原因です。
ステップ1:源泉徴収票と通知書の数字を突き合わせる
前年の源泉徴収票を手元に用意し、通知書の「給与収入」「給与所得」が一致するかを確認します。一致しない場合は勤務先や市区町村の税務担当窓口に問い合わせましょう。
ステップ2:所得控除欄に「ひとり親控除」が入っているか
所得控除欄に「ひとり親控除」または「寡婦控除」の記載があるかを確認します。記載がない、または0円の場合は年末調整で申告漏れの可能性があります。源泉徴収票の摘要欄も併せて確認しましょう。
ステップ3:扶養親族数が正しいか
1「19歳以上23歳未満の子どもは特定扶養親族として通常より高い扶養控除(住民税45万円)が受けられます。16歳以上19歳未満は一般の扶養親族(住民税33万円)です。正しく入力されているか確認してください。
ステップ4:ふるさと納税・医療費控除の反映
前年にふるさと納税や医療費控除(年間医療費10万円超)を申告した場合、通知書の所得控除欄や寄附金税額控除欄に反映されているかを確認します。反映漏れの場合は税務署や市区町村へ問い合わせてください。
4. 住民税非課税世帯になるラインと、なった場合のメリット
「自分は住民税非課税世帯になれるか」を知っておくと、保育料・医療費・給付金などの支援取りこぼしを防げます。シングルマザー世帯はひとり親控除(住民税30万円)が加わるぶん、一般世帯より非課税ラインに到達しやすい傾向があります。
住民税非課税世帯の所得基準(一般的な目安)
住民税の非課税基準は地方税法と各自治体の条例で定められており、自治体によって若干異なります。一般的な目安(生活保護法の級地区分1級地に該当する自治体)は次のとおりです。
- 本人のみ(扶養なし):合計所得金額45万円以下(給与収入換算で100万円以下)
- 扶養親族あり:合計所得金額が「35万円×(本人+扶養親族の人数)+31万円」以下
たとえば子ども1人を扶養するシングルマザーの場合、合計所得金額が35万円×2+31万円=101万円以下であれば、住民税の均等割・所得割ともに非課税になります。子ども2人を扶養する場合は、合計所得金額が35万円×3+31万円=136万円以下(給与収入換算で約235万円以下)が目安です。
※基準額は自治体によって異なる場合があります。正しくはお住まいの市区町村ホームページや窓口で確認してください。
非課税世帯になると受けられる主な支援
住民税非課税世帯と認定されると、年間で数万円〜数十万円規模の支援が受けられるケースがあります。
- 0〜2歳児の保育料が無償:認可保育所・認定こども園が対象
- 高等教育の修学支援新制度の満額支援:私立大学なら授業料減免と給付型奨学金で年間最大170万円規模の支援
- 高等職業訓練促進給付金の上乗せ:月額10万円(課税世帯は7万500円)
- 国民健康保険料・国民年金保険料の軽減・免除:所得に応じて7割・5割・2割の軽減
- 低所得世帯向け給付金:物価高対策などで非課税世帯に給付されるケースが多い
制度の詳細や14の優遇制度の一覧については関連記事『住民税非課税世帯とは?シングルマザーが受けられる14の優遇制度まとめ』で詳しく解説しています。
非課税世帯のシングルマザーが大学進学時の支援まで含めて受けると、年間の実質負担は100万円以上の差になる可能性もあります。ボーダーライン付近のご家庭は、控除の反映漏れがないかを真っ先に確認したいところです。
5. 控除の申請漏れを発見したら?修正申告の手順
通知書を見て「ひとり親控除が反映されていない」とわかった場合、まだ取り戻すチャンスがあります。所得税については「更正の請求」、住民税については市区町村への申し出で過去5年分まで修正できます。
パターン1:今年分の年末調整で申告漏れだった場合
前年の年末調整でひとり親控除のチェックを入れ忘れた場合は、翌年3月15日までに確定申告(還付申告)を行えば、所得税が還付され、住民税にも反映されます。3月を過ぎていても、5年以内であれば確定申告は受理されます。
パターン2:過去の年分も申告漏れだった場合
過去5年以内であれば、税務署で更正の請求または還付申告を行うことで、所得税・住民税ともに取り戻せます。2026年時点では、2021年(令和3年)分まで遡って申告できます。
必要書類は次のとおりです。
- 該当年分の源泉徴収票(勤務先で再発行可)
- マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類
- 還付金の振込先口座情報
- 子どもとの関係を証明する書類(戸籍謄本など。住民票で確認できる場合は不要なケースもあり)
e-Taxを使えば自宅から申告できる
マイナンバーカードとスマートフォンがあれば、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」からe-Taxで申告できます。税務署へ行く時間が取りにくいシングルマザーには、スマホ完結のe-Taxが現実的です。
年収の壁との関係も確認しておく
住民税を考えるうえで、年収の壁(103万円・130万円・150万円など)との兼ね合いも重要です。扶養控除を損せず働く方法も確認しておくと良いでしょう。
まとめ
6月に届く住民税通知書は、シングルマザーの家計にとって「控除モレを発見できる年に1度のチャンス」です。最後に大切なポイントを整理します。
- 住民税は「均等割(年5,000円前後)+所得割(課税所得の約10%)」で計算される
- 通知書で見るべきは「給与収入」「所得控除」「課税標準額」「所得割額・均等割額」の4つの欄
- ひとり親控除(住民税30万円)と寡婦控除(住民税26万円)は要件と控除額が異なる。シングルマザーで子どもがいて所得500万円以下ならひとり親控除を優先する
- 控除漏れがあれば過去5年まで確定申告(更正の請求)で取り戻せる。e-Taxならスマホ完結で申請できる
- 住民税非課税ラインを下回れば、保育料無償化・修学支援・給付金など多くの優遇制度の対象になる
「通知書をちゃんと見たことがなかった」「控除が入っているかわからない」というシングルマザーは、まず手元の通知書の所得控除欄を開いてみてください。1〜2分のチェックで、年5〜6万円・5年で25〜30万円の差が生まれる可能性があります。控除が反映された後の家計が将来どう変わるかを具体的な数字で確認したい方は、以下の無料診断をお試しください。
(出典:総務省「個人住民税の概要」、国税庁「No.1171 ひとり親控除」、国税庁「No.1170 寡婦控除」、地方税法、所得税法)
運営者
FP相談1,200人以上の経験とWeb事業7年、自身の離婚・資産形成経験をもとに「ママ、大丈夫」を開発。年収200〜300万円のシングルマザーが、専門家に頼らず家計の未来を把握できるサービスを目指しています。

