はじめに
障害のある子どもを育てながら、ひとりで家計を支えているシングルマザーのみなさん、毎日本当にお疲れさまです。医療費・療育費・日々の生活費と、出費が重なる中で「使える制度をすべて活用できているか不安」と感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、特別児童扶養手当について、対象となる子どもの条件・支給金額・所得制限・申請の手順を、シングルマザーの視点からわかりやすくお伝えします。
この記事を読むとわかること:
- 特別児童扶養手当の対象・支給金額・所得制限
- 申請に必要な書類と手続きの流れ
- 児童扶養手当など他の制度との組み合わせ方
特別児童扶養手当とは?制度の基本を知ろう
特別児童扶養手当は、精神または身体に障害のある子どもを家庭で育てている保護者を対象に、国が支給する手当です。根拠法は「特別児童扶養手当等の支給に関する法律」(1964年制定)です。
手当の目的は「障害のある子どもの福祉の増進」です。施設に入所している場合は対象外となり、あくまで在宅で育てている家庭が対象になります。手当は子どもが20歳になるまで支給されます。
支給金額(2024年度)
支給は年3回で、4月・8月・11月にそれぞれ前4か月分がまとめて振り込まれます。
なお金額は物価に連動して毎年4月に改定されます(2024年度の額を記載)。出典:厚生労働省「特別児童扶養手当について」。子どもが2人以上いる場合、それぞれについて申請できます。1人目が1級、2人目が2級であれば合計で月92,210円を受け取れます(55,350円+36,860円)。
1級・2級の判定基準
等級は障害の種類・程度によって判定されます。身体障害者手帳の等級とは必ずしも一致しない点に注意が必要です。主な目安は以下のとおりです。
- 1級:両上肢・両下肢・体幹に重度の機能障害がある、視力がほぼない、重度の知的障害など、日常生活に常時介護を必要とする程度
- 2級:1級よりやや軽度で、日常生活が著しく制限される程度(歩行困難・言語機能の障害・中等度知的障害など)
発達障害(自閉スペクトラム症・ADHDなど)については、症状の程度が重く日常生活に著しく支障がある場合は認定される可能性があります。精神科・発達外来の医師に診断書を作成してもらい、市区町村の窓口に相談してみましょう。
誰が申請できる?対象となる子どもの条件
特別児童扶養手当の受給者は「障害のある子どもを養育している保護者」です。実父母だけでなく、養父母・里親などの養育者も対象になります。子どもが20歳未満であることが必要です。
対象となる障害の種類
- 身体障害:視覚・聴覚・肢体不自由・内部障害など
- 知的障害(療育手帳B以上が目安だが、手帳がなくても認定されるケースあり)
- 精神障害:自閉スペクトラム症・統合失調症・うつ病など
- 難病(指定難病・小児慢性特定疾病を含む)
- 発達障害(程度による。重く継続的な支援が必要な場合)
障害者手帳を持っていなくても申請できます。医師の診断書をもとに認定機関が審査しますので、手帳がないからといって諦める必要はありません。
対象外になるケース
- 子どもが児童福祉施設(入所型)に入所している期間
- 子どもが20歳以上になったとき
- 受給者(保護者)が障害を理由に別の公費支給を受けているなど、法令で定める場合
所得制限はどうなっている?支給停止の仕組み
特別児童扶養手当には所得制限があります。前年の所得が一定額を超えると、その年の8月から翌年7月までの支給が停止されます。所得は「受給者本人(保護者)」の所得で判断され、同一生計の配偶者・扶養義務者の所得も影響します。
2024年度の所得制限限度額(受給者本人)
出典:厚生労働省「特別児童扶養手当の受給資格・所得限度額」
ここでいう「所得」は税法上の所得(給与収入から給与所得控除を引いたもの)をさします。年収ではなく所得で判定されるため、年収300万円程度のシングルマザーであれば多くの場合、所得制限に引っかかりません。不明な場合は市区町村窓口で確認しましょう。
申請の手順と必要書類
特別児童扶養手当の申請は、居住している市区町村の窓口(こども家庭課・福祉課など)で行います。都道府県に申請するわけではないので、まずはお住まいの市区町村役所に連絡してみてください。
申請の流れ
- 市区町村窓口に問い合わせる:制度の説明を受け、必要書類の一覧をもらいます。
- 医師の診断書を用意する:様式は市区町村が用意しています。かかりつけ医または専門医に記入してもらいます(費用は医療機関により異なります)。
- 書類一式を提出する:窓口で申請書に記入し、必要書類とともに提出します。
- 審査・認定:都道府県が認定を行います。概ね3〜4か月かかることがあります。
- 支給開始:認定された翌月分から支給が開始されます(申請月分からではないため、早めに動くことが大切です)。
一般的に必要な書類
- 特別児童扶養手当認定請求書(窓口でもらえます)
- 医師の診断書(市区町村指定の様式)
- 申請者(保護者)の戸籍謄本
- 子どもの戸籍謄本
- 申請者の個人番号(マイナンバー)確認書類
- 申請者名義の振込口座情報
- 印鑑(認め印)
障害者手帳をお持ちの場合は、診断書の代わりに手帳のコピーで代用できるケースがあります。ただし手帳の等級と特別児童扶養手当の等級は別の基準なので、窓口に確認しましょう。
申請時の注意点
審査には時間がかかり、申請した月の翌月から支給が始まります(認定日によっては翌々月からになることも)。早めに申請することで受け取れる額が増えますので、「まだ準備が整っていない」と思っていても、まず窓口に相談してみることをおすすめします。窓口で申請書類の準備をサポートしてもらえます。
他の制度との組み合わせ活用術
特別児童扶養手当は、他の手当や支援制度と組み合わせて受給することができます。使える制度を最大限活用することで、毎月の家計の安定度が大きく変わります。
児童扶養手当との併給
シングルマザーが受け取れる「児童扶養手当」と「特別児童扶養手当」は、両方同時に受給できます。以前は調整されていましたが、現在は完全に別の制度として扱われます。
たとえば、障害等級2級の子どもがいるシングルマザーの場合、2024年度の試算では:
- 児童扶養手当(全額支給の場合):月45,500円
- 特別児童扶養手当2級:月36,860円
- 合計:月82,360円
年間にすると約98万円の支給になります。これは家計に大きく貢献します。所得制限はそれぞれ別の基準があるので、どちらか一方だけが停止されることもあります。
障害児通所給付(放課後等デイサービスなど)
障害のある子どもが放課後等デイサービスや児童発達支援を利用している場合、その費用の9割が「障害児通所給付」として市区町村から支払われます(保護者負担は最大でも月4,600円または37,200円の上限があります)。
この給付は特別児童扶養手当とは別の制度で、同時に利用できます。事業所から申請をサポートしてもらえることが多いので、利用中の施設に確認してみましょう。
自治体独自の障害児手当・医療費助成
多くの自治体では、障害のある子どもを対象に医療費の自己負担を無料または低額にする「小児慢性特定疾病医療費助成」や「自立支援医療(育成医療)」「重度心身障害者医療費助成」などの制度があります。
これらは自治体ごとに名称・対象・手続き方法が異なります。お住まいの市区町村の福祉窓口または保健センターに「使える制度を全部教えてほしい」と聞くと、一覧を案内してもらえることが多いです。
特別障害者手当・障害児福祉手当
20歳未満の重度障害児を対象とした「障害児福祉手当」(月額15,690円・2024年度)という制度もあります。特別児童扶養手当の1級に相当する重度の障害がある場合に対象となり、こちらも併給が可能です。
出典:厚生労働省「障害児福祉手当について」
よくある疑問に答えます
発達障害でも申請できますか?
できます。ただし、発達障害があるからといって自動的に認定されるわけではありません。症状が重く、日常生活に著しく支障がある場合に認定されます。精神科や発達外来の主治医に「特別児童扶養手当の診断書を書いてもらえますか」と相談してみましょう。主治医が支援に積極的であれば、認定されるように診断書を記載してもらえます。
手帳を持っていませんが申請できますか?
できます。特別児童扶養手当は障害者手帳の有無ではなく、医師の診断書をもとに審査されます。むしろ手帳を持っていない方でも認定されるケースがありますので、まず市区町村窓口に相談してみてください。
子どもが入院中でも受給できますか?
入院中であっても、施設入所(福祉施設への長期入所)でなければ受給できます。ただし、長期的に入所型の施設に移った場合は停止となります。
働いていても受給できますか?
はい、働きながら受給できます。所得制限の限度額以内であれば問題ありません。シングルマザーの場合、子ども1人(扶養親族1人)の場合は所得限度額が約498万円と高めに設定されているため、多くの方が受給できます。
更新は必要ですか?
特別児童扶養手当は毎年8月に「所得状況届」を提出する必要があります(前年の所得を報告します)。この手続きを怠ると支給が停止されます。市区町村から通知が届くので、必ず期限内に手続きしましょう。
また、障害の状態に変化があった場合や施設入所になった場合なども届け出が必要です。
申請後に知っておくべきこと
認定を受けて手当の支給が始まったあとも、いくつかの手続きや注意事項があります。見落としやすいポイントをまとめました。
支給停止になるケースとは
以下のケースでは支給が停止または減額になります。変化があったら速やかに市区町村へ届け出ましょう。
- 前年の所得が限度額を超えた(8月から翌年7月まで停止)
- 子どもが入所型の施設に入った
- 子どもが20歳になった
- 受給者が障害者となり、障害を事由とした年金を受給するようになった
- 子どもの障害の程度が回復し、認定基準を満たさなくなった(診断書提出による再認定が必要)
障害の再認定(更新)
特別児童扶養手当の認定は永続するわけではなく、障害の程度が変わる可能性がある場合には再認定が必要になることがあります。認定機関から「再診断書の提出」を求められたときは、期限内に提出してください。
障害が重くなった場合は、2級から1級への変更申請ができます。変化を感じたら主治医に相談し、等級変更の可能性を確認してみましょう。
所得状況届(毎年8月・必須)
特別児童扶養手当を受給中は、毎年8月に「所得状況届」を提出しなければなりません。市区町村から届く案内に従い、期限内に窓口または郵送で手続きします。この届出を忘れると手当が自動的に停止されてしまいます。スマートフォンのカレンダーに「8月:所得状況届」と繰り返しリマインダーを設定しておくと安心です。
転居した場合の手続き
市区町村をまたいで引っ越した場合、転入先の市区町村で改めて認定請求(転入届)を行う必要があります。手続きが遅れると支給が一時停止されることがあるため、転居後はできるだけ早く新住所の窓口へ行きましょう。
手当を受け取ったあとの家計管理
特別児童扶養手当をはじめ、各種手当を受け取れるようになったら、その分を家計にどう活かすかを考えてみましょう。障害のある子どもを育てながら家計を安定させるためのポイントを紹介します。
手当の使い道を決めておく
手当は「まとめて振り込まれる」ため、計画なしに使うとすぐになくなってしまいます。受け取ったら以下のように目的別に分けておくと管理しやすいです。
- 療育・医療費用の積立:月々変動する医療費や療育費に備えて別口座に積み立てる
- 教育費の積立:子どもの将来の教育資金として貯蓄する
- 生活費の補填:毎月の生活費が不足する分を補う
- 緊急時の備え:突発的な出費(入院費・修繕費など)に備えて手をつけない貯金
障害のある子どもが18歳・20歳を超えたあとの見通しを立てる
特別児童扶養手当は子どもが20歳になると受給が終了します。その後は「特別障害者手当」(重度のみ)に移行するケースもありますが、受給要件は別途確認が必要です。
20歳以降は障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)の受給が本人名義で始まる可能性があります。子どもが将来どのような支援を受けられるか、今から把握しておくことで、家計の見通しが立てやすくなります。
ひとりで抱えすぎない
障害のある子どもを育てながら仕事・家事・療育・手続きをひとりでこなすシングルマザーは、精神的にも体力的にも限界を感じることがあります。市区町村の相談窓口(相談支援専門員・ソーシャルワーカー)や、障害のある子どもを持つ保護者同士のコミュニティを活用して、一人で抱えすぎないことが大切です。
障害のある子どもの将来に備える貯蓄方法
障害のある子どもが成人した後の生活費や医療費・福祉サービス利用料は、一般的な子育てとは異なる部分も多くあります。受け取った手当を少しずつ積み立て、将来のためのお金を準備しておくことが重要です。
具体的には、以下のような方法が検討できます。
- こども保険・学資保険:月々の保険料が無理のない範囲で、満期時に一定額受け取れる仕組み。将来の教育費・生活費の一部として計画的に準備できます。
- つみたてNISA(新NISA):非課税で少額からコツコツ積み立てる長期投資。10〜20年以上の長期積立で効果が出やすく、将来の資産形成に向いています。月1,000円程度からでも始めることができます。
- 障害者扶養共済制度(「しょうがい共済」):保護者が毎月一定額を積み立てることで、保護者が亡くなった後に子どもへの終身年金(月2万円または4万円)が支給される制度。都道府県・市区町村の窓口で加入できます。掛け金は所得控除の対象です。
「障害者扶養共済制度」は特に見落とされがちですが、万が一の備えとして非常に重要な制度です。保護者である自分に何かあった後の子どもの生活を守るために、ぜひ検討してみてください。
相談できる窓口・支援機関
手続きの相談や制度の案内を無料で行っている窓口・支援機関を紹介します。
- 市区町村の障害福祉課・こども家庭課:特別児童扶養手当の申請・相談はここで。関連する制度もまとめて案内してもらえます。
- 相談支援専門員:障害のある子どもが通っている施設(放課後等デイサービスなど)に配置されていることが多く、制度の活用をサポートしてくれます。
- 発達障害者支援センター:各都道府県に設置されている相談機関。発達障害に関する制度・日常生活・就学についての相談ができます。
- NPO・当事者団体:同じ立場のシングルマザー・障害児の保護者同士でつながれるコミュニティ。精神的なサポートや情報共有に役立ちます。
- 法テラス:養育費問題・行政対応など法律的なサポートが必要なとき。経済的に困窮している方は弁護士費用の立替制度もあります。
申請を後回しにしがちな理由と、それでも動くべき理由
制度を知っていても、実際に申請できている方は多くありません。「申請しようと思いながら後回しにしている」という方の声を聞くと、よく出てくる理由があります。
- 「うちの子は軽度だから、たぶん対象外だと思って」
- 「書類が多そうで面倒くさそう」
- 「どこに相談すればいいかわからなかった」
- 「診断書の費用がかかると聞いて踏み出せなかった」
どれも「わかる」と感じる理由です。でも、申請しなければ確実にゼロ円です。もし認定されれば、2級でも月36,860円、年間で約44万円が受け取れます。
診断書の費用は医療機関によりますが、2,000〜5,000円程度が一般的です。1か月分の手当で元が取れる計算です。また、窓口スタッフは「申請できるかどうか一緒に確認する」ことを仕事としていますので、「対象かどうか不安」という状態でも相談に行って問題ありません。
「とりあえず窓口に行って聞いてみる」という一歩が、毎月数万円の受給につながるかもしれません。今日、電話だけでも入れてみてください。
まとめ
特別児童扶養手当は、障害のある子どもを育てるシングルマザーにとって、家計を支える重要な制度のひとつです。この記事のポイントをまとめます。
- 1級(重度)は月55,350円、2級(中程度)は月36,860円が支給される(2024年度)
- 障害者手帳がなくても医師の診断書があれば申請できる
- 発達障害でも、程度が重ければ認定される可能性がある
- 児童扶養手当・障害児福祉手当・障害児通所給付などと併給できる
- 所得制限はあるが、年収300万円前後のシングルマザーであれば多くの場合受給できる
- 申請は市区町村窓口で。審査に3〜4か月かかるため、早めに動くほど受取額が増える
手当を受け取れるようになったら、次は「この先の家計がどうなるか」を数字で確認してみましょう。下の無料診断では、児童扶養手当・特別児童扶養手当・就業収入をすべて加味したライフプランをシミュレーションできます。
運営者
FP相談1,200人以上の経験とWeb事業7年、自身の離婚・資産形成経験をもとに「ママ、大丈夫」を開発。年収200〜300万円のシングルマザーが、専門家に頼らず家計の未来を把握できるサービスを目指しています。

