離婚後の年金はどうなる?年金分割・シングルマザーの老後資金を解説
「離婚したら年金はどうなるの?」「老後のお金が心配」——離婚後の年金について正しく理解しているシングルマザーは多くありません。子育てが忙しく、老後のことはついつい後回しになりがちです。しかし、年金分割の手続きをしていないと、将来受け取れる年金が大幅に少なくなるケースがあります。また、育児で働けない時期が長くなるほど、自分自身の老後の年金受給額は少なくなります。この記事では、離婚後の年金分割の仕組みから、シングルマザーが今からできる老後対策まで、わかりやすく解説します。
シングルマザーが受け取れる年金の種類
老後に受け取れる公的年金は大きく2種類あります。国民年金(基礎年金)は、20〜60歳の間に保険料を納めた期間に応じて受給できるもので、2024年度の満額は年約816,000円(月約68,000円)です。保険料を全期間納めた場合の金額で、未納・免除期間があるとその分だけ受給額が減ります。
厚生年金は、会社員・公務員として働いた期間と収入に応じて国民年金に上乗せされる年金です。パートや非正規雇用の場合は、一定の条件(週20時間以上・月額賃金8.8万円以上など)を満たさないと厚生年金に加入できません。育児期間中に厚生年金の加入期間が短くなると、老後の受給額が少なくなるため注意が必要です。
年金分割とは何か?
年金分割とは、婚姻期間中に元配偶者が納めた厚生年金保険料の記録を、離婚時に夫婦で分割できる制度です。婚姻中に専業主婦またはパート勤務だった場合、自分自身の厚生年金がほとんどない場合に特に重要です。年金分割を行うことで、元夫(または元妻)が会社員として積み上げた厚生年金の一部を、自分の年金記録として受け取ることができます。
年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。合意分割は、当事者が分割割合を話し合い(最大50%まで)、公正証書などで合意して手続きするものです。合意できない場合は家庭裁判所で決定します。3号分割は、婚姻期間中に国民年金第3号被保険者(専業主婦等)だった期間が対象で、相手の同意なく2分の1の割合で分割できます。2008年4月以降の婚姻期間が対象です。
年金分割はあくまで「婚姻期間中の厚生年金記録」を分けるもので、元夫が現在受け取っている年金額を直接分けるわけではありません。分割されるのは年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)であり、実際に年金を受け取れるのは自分が65歳(または繰り上げ受給なら60歳〜)になってからです。また、元夫が自営業で厚生年金に加入していなかった場合、分割できる記録がないため実質的に意味がなくなります。
年金分割の手続き方法
年金分割の手続きは、最寄りの年金事務所(日本年金機構)で行います。手続きの前に「年金分割のための情報通知書」を請求することをおすすめします。この書類には、分割対象となる年金記録と、分割した場合の見込み額が記載されているため、手続きを進める前に確認できます。
必要な書類は、戸籍謄本(婚姻期間・離婚を証明するもの)・年金手帳・本人確認書類・合意分割の場合は公正証書または合意書(私署証書の認証)などです。3号分割の場合は、相手方の同意が不要なため、比較的手続きがシンプルです。わからない点は年金事務所の窓口で直接相談できますので、一人で抱え込まずに聞いてみましょう。
合意分割の場合は離婚前後に双方が年金事務所へ出向く必要がありますが、遠方に住んでいる場合は書類のやり取りで対応できるケースもあります。また、弁護士や司法書士などの専門家に手続きを依頼することも可能です。離婚協議の際に財産分与の一環として年金分割の割合を取り決めておくと、後の手続きがスムーズになります。
シングルマザーの老後年金はいくらになるか
シングルマザーの老後年金が低くなりやすい理由は、①婚姻中の専業主婦・パート期間に自分自身の厚生年金が積み上がらない、②離婚後の非正規雇用期間が長いと厚生年金加入期間が短くなる、③国民年金の未納・免除期間があると基礎年金が減る、の3点です。
たとえば、40年間フルタイムで働いた場合の国民年金満額(月約68,000円)に対し、20年間しか厚生年金に加入しなかった場合、厚生年金の受給額は大幅に減ります。年金収入だけで老後を賄うのが難しくなるケースも多く、今から老後資金の準備を始めることが重要です。
厚生労働省の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、女性の厚生年金(老齢厚生年金)の平均月額は約10万4千円(国民年金部分含む)です。一方、国民年金のみを受給している女性の平均は約5万4千円にとどまります。生活費として一般的に必要とされる月15〜20万円との差を考えると、何らかの補完的な収入源や貯蓄が必要であることがわかります。この現実を直視することが、老後対策の第一歩です。
今からできる老後資金対策
① 国民年金の未納をゼロにする・免除期間の追納
国民年金保険料の未納がある場合は、できる限り納付しましょう。過去2年分は遡って納付できます。また、保険料の全額免除・猶予を受けていた期間は、10年以内であれば追納が可能です(ただし追納が遅れるほど加算額がかかります)。免除を受けたまま追納しない場合、受け取る基礎年金が大幅に減ります。年金事務所に相談すれば、未納額と将来の受給額増加分の試算を教えてもらえます。
② 厚生年金に加入できる働き方を選ぶ
パートや非正規で働く場合も、条件を満たせば厚生年金に加入できます。2022年10月からは、従業員101人以上の企業で週20時間以上・月額賃金8.8万円以上勤務すれば加入対象になりました(2024年10月からは51人以上に拡大)。厚生年金に加入することで、老後の受給額が増えるだけでなく、障害年金・遺族年金の保障も手厚くなります。多少手取りが減っても、長い目で見れば厚生年金に加入できる働き方の方が有利です。
③ iDeCoで老後資金を積み立てる
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で老後資金を積み立てられる制度で、掛け金が全額所得控除になる税制優遇が魅力です。シングルマザーのように所得が限られている場合でも、年間数万円単位の節税効果があります。月5,000円から始められ、60歳まで積み立てたお金を老後に受け取ることができます。ただし原則60歳まで引き出せないため、緊急予備費を確保した上で余裕資金で始めることをおすすめします。
たとえば、月1万円をiDeCoで30年間積み立て、年利3%で運用できたと仮定した場合、受取総額は約583万円(元本360万円+運用益223万円)になります。さらに、掛け金が全額所得控除になるため、毎年の節税分が加算されます。年収250万円の方が月1万円の掛け金を拠出した場合、年間約1.5〜2万円の節税効果が見込めます。長期積み立てと節税のダブル効果がiDeCoの強みです。
④ つみたてNISAで資産運用を始める
2024年からスタートした新NISAは、年間最大360万円まで非課税で投資できる制度です。運用益・売却益が非課税になるため、長期的な資産形成に向いています。つみたて投資枠では月100円から積み立て可能で、リスクの低いインデックスファンドを選べば初心者でも取り組みやすいです。老後資金としての積み立てに加え、子どもの大学進学費用の準備にも活用できます。
NISAは引き出しの自由度が高く、必要なときに売却して現金化できる点がiDeCoと異なります。「老後まで引き出せない縛りが不安」という方は、NISAで柔軟に積み立てる方法も選択肢です。まずはiDeCoとNISAの両方について金融機関に無料相談してみることをおすすめします。多くの銀行・証券会社でオンラインでの口座開設・相談が可能です。
年金と合わせて確認したいひとり親向けの公的保障
老後資金対策と並行して、万が一の際の保障についても確認しておきましょう。病気やケガで長期間働けなくなった場合に備えた「障害年金」、自分が亡くなった場合に子どもへ支給される「遺族基礎年金」は、年金保険料を払っていることが受給の条件です。国民年金保険料の未納が続くと、これらの保障も受けられなくなることがあります。
特に、シングルマザーが死亡した場合、18歳未満の子どもがいれば「遺族基礎年金」が子どもへ支給されます(2024年度:子ども1人の場合、年額約102万円)。この保障を維持するためにも、国民年金保険料の支払いを継続することが重要です。経済的に困難な場合は、全額または一部の保険料免除を申請した上で、納付困難な期間が過ぎたら追納するという方法を取ることができます。
よくある失敗例と気をつけるポイント
失敗例① 年金分割の2年期限を過ぎてしまう
離婚直後は引越し・子育て・仕事など、生活の立て直しに追われ、年金分割の手続きが後回しになりがちです。しかし、離婚後2年を過ぎると原則として請求できなくなります。離婚が決まったタイミングで、年金分割の手続きを「やることリスト」の最優先事項として書き出しておきましょう。
失敗例② 元夫が自営業だったため分割できる記録がない
年金分割の対象は「厚生年金の記録」のみです。元夫が自営業・フリーランスだった場合、国民年金しか加入していないため、分割できる厚生年金の記録がなく実質的に意味がなくなります。婚姻期間中に元夫が会社員だった期間があればその分は対象になりますが、全期間自営業の場合は分割額がゼロになります。年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を取り寄せて、分割できる記録がどのくらいあるか確認しましょう。
失敗例③ iDeCo・NISAを始めるのを先延ばしにする
「子どもが大学を卒業してから始めよう」と先延ばしにするほど、老後資産の積み立てに使える時間が短くなります。複利の力を最大限に活かすには、金額が少なくても早く始めることが重要です。月3,000円からでも始められるiDeCoは、少額から老後対策をスタートするのに最適です。
よくある質問(Q&A)
Q. 年金分割すると元夫の年金が減りますか?
はい、年金分割を行うと、元夫の婚姻期間中の厚生年金記録の一部が妻側に移転するため、元夫の将来の受給額は減ります。しかし、これは法律で認められた正当な権利ですので、遠慮する必要はありません。特に婚姻期間が長い場合や、婚姻中に専業主婦だった期間が長い場合は、大きな影響があります。
Q. 離婚後2年が過ぎてしまいました。年金分割はもう無理ですか?
原則として離婚後2年以内に手続きが必要です。2年を過ぎると請求できなくなります。ただし、例外として調停・審判が進行中の場合など一定の事由があれば期間が延長されるケースもあります。年金事務所に相談してみることをおすすめします。
Q. 専業主婦期間が長い場合、年金分割の効果は大きいですか?
はい、婚姻中に専業主婦だった期間が長いほど、年金分割による受給額増加の効果は大きくなります。元夫が会社員で長年厚生年金を納めていた場合は特に効果的です。一方で、元夫が自営業(国民年金のみ)だった場合、厚生年金記録がないため分割できる金額がゼロまたは少額になります。
Q. 遺族年金はシングルマザーに関係しますか?
遺族年金は、元配偶者との婚姻関係が終了した場合は基本的に対象外です。しかし、現在の配偶者(再婚後)が亡くなった場合や、子どもが18歳未満の場合に支給される「遺族基礎年金」は関係します。自分が死亡した際に子どもへの保障を確保するため、生命保険や死亡保障の整備も老後対策と合わせて考えることが大切です。
Q. 国民年金の保険料が払えない場合はどうすればいいですか?
経済的に苦しい場合は「免除制度」または「納付猶予制度」を利用できます。全額免除・一部免除など複数の段階があり、申請書は市区町村の国民年金担当窓口や年金事務所で入手できます。免除期間は将来の年金受給額が減額されますが、未納(払わない)よりも免除申請した方が有利です。免除を受けた期間は、後から追納することで年金額を回復させることができます(10年以内に追納可能)。
シングルマザーが老後に向けて今すぐできる具体的な行動
① ねんきん定期便を確認する
まず自分の年金の現状を把握することから始めましょう。毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」には、これまでの加入記録と将来受け取れる年金の見込み額が記載されています。紙で届かない場合は「ねんきんネット」(日本年金機構の公式サービス)でオンライン確認できます。「自分の老後の年金はいくらか」を知ることが、対策の第一歩です。特に婚姻中に国民年金の未納期間がある方は、未納分を追納することで受給額を増やせる場合があります(追納は過去10年分まで可能)。
② 国民年金保険料の免除・猶予制度を活用する
収入が少なくて国民年金保険料が払えない場合、「免除・猶予制度」を活用できます。全額免除・一部免除・若者猶予(50歳未満)などがあり、所得が一定以下の場合は申請によって保険料の全部または一部が免除されます。免除期間も老後の年金受給に算入されるため(全額免除期間は受給額が減額)、未納のまま放置するよりもはるかに有利です。申請は市区町村の国民年金窓口で行います。ひとり親世帯は優先的に認定されるケースも多いです。
③ 厚生年金に加入できる働き方を選ぶ
厚生年金は会社員・公務員として働くことで加入できます。パートタイム労働者でも、2024年10月以降は「週20時間以上・月額賃金8.8万円以上・2ヶ月超の雇用見込み」を満たす場合は厚生年金に加入できます(社会保険の適用拡大)。厚生年金に加入することで、老後の受給額が国民年金のみの場合より増えます。現在国民年金のみ加入のシングルマザーは、厚生年金に加入できる勤務先・勤務形態への変更を検討することが老後対策として有効です。
④ 老後2,000万円問題を自分ごととして試算する
「老後2,000万円問題」が話題になりましたが、実際に必要な額は生活スタイルや年金受給額によって大きく異なります。シングルマザーの場合、65歳以降の生活費を月10〜13万円とすると、20年間で2,400〜3,120万円必要です。年金受給額(月5〜8万円と想定)で賄える部分を引くと、自己負担分は1,200〜2,700万円程度が目安です。これを現在から準備するとすると、月いくら積み立てれば良いか計算できます。金融庁の「資産運用シミュレーター」を使えば、積立額と利率を入力するだけで試算できますので、ぜひ活用してみてください。
年金に関するよくある疑問(Q&A)
Q. 離婚後、元夫が自営業だった場合は年金分割できますか?
A. 年金分割の対象は「厚生年金の記録」です。元夫が自営業者(国民年金のみ加入)だった場合、厚生年金の記録がないため分割できる記録がありません。一方、元夫が会社員だった期間がある場合は、その期間の厚生年金記録に限り分割の対象になります。まず年金事務所に「情報通知書」を請求し、元夫の厚生年金加入期間と分割対象額を確認しましょう。
Q. 年金分割の手続きは離婚後いつまでにすればいいですか?
A. 年金分割の請求期限は「離婚成立の翌日から2年以内」です。2年を過ぎると請求できなくなります。ただし、調停・審判・訴訟中の場合は手続きが延長されることがあります。「まだ時間がある」と思わず、離婚が成立したらできるだけ早く年金事務所に相談することをおすすめします。手続きには元配偶者の協力が必要なケースもあるため、離婚後の関係が冷える前に動き出すことが重要です。
Q. 国民年金保険料が払えない月が続いています。どうすればいいですか?
A. 支払いが困難な場合は、前述の「免除・猶予制度」を活用してください。未納のまま放置することは絶対に避けましょう。理由は2つあります。①未納期間は老後の年金受給額から差し引かれるだけでなく、②障害年金・遺族年金の受給資格を失うリスクがあるためです。免除・猶予なら将来的に収入が増えた際に追納(10年以内)して受給額を回復させることができます。申請は市区町村の国民年金窓口で行え、当日でも受け付けてもらえます。
まとめ:年金分割は早急に・老後対策は今から少しずつ
年金は「将来の自分への仕送り」と考えると、今の行動の意味が理解しやすくなります。子育てに追われている今だからこそ、小さな積み立てを続けることが何十年後かの自分を助けます。「老後は子どもに頼ればいい」という考えは、子どもにとっても大きな負担になります。自分の老後は自分で準備するという意識を持ち、月3,000〜5,000円の小さな積み立てから始めてみましょう。
離婚後の年金については、年金分割と自分自身の老後積み立ての両面から対策することが重要です。年金分割は離婚後2年という期限があるため、まだ手続きをしていない方は今すぐ年金事務所に相談しましょう。特に婚姻中に専業主婦やパートで働いていた期間が長い場合は、分割によって老後の受給額が大幅に変わることがあります。
自分自身の老後資金については、子育てが忙しい今は少額でも構いません。月5,000円のiDeCoやNISAの積み立てから始めるだけで、長期的には大きな資産になります。国民年金の未納をゼロにすること、厚生年金に加入できる働き方を選ぶことも並行して意識しましょう。老後の不安を数字で把握することが、具体的な行動の第一歩です。
運営者
FP相談1,200人以上の経験とWeb事業7年、自身の離婚・資産形成経験をもとに「ママ、大丈夫」を開発。年収200〜300万円のシングルマザーが、専門家に頼らず家計の未来を把握できるサービスを目指しています。

