はじめに
「もし元夫が亡くなったら、子どもの遺族年金はもらえるの?」「自分が亡くなったあと、子どもの生活はどうなるの?」——シングルマザーが一度は気にする疑問ですが、制度がわかりにくくて避けがちなテーマでもあります。
遺族年金は、亡くなった方の年金加入状況や家族構成によって支給額が大きく変わる制度です。条件さえ満たせば、子ども2人を扶養するシングルマザーで月12万円以上を受け取れるケースもあります。逆に、知らずに過剰な民間死亡保険に加入して保険料で家計を圧迫している人も少なくありません。
この記事を読むとわかること:
- 遺族基礎年金・遺族厚生年金の仕組みと受給額の計算方法
- 死別・離別の違いで受給できるか/できないか
- 遺族年金を踏まえたうえで、民間死亡保険にいくら入るべきか
1. 遺族年金は2階建て
日本の遺族年金は、国民年金から支給される遺族基礎年金と、厚生年金から支給される遺族厚生年金の2階建て構造です。所管は厚生労働省、運営は日本年金機構で、根拠法は国民年金法と厚生年金保険法です。
誰がどちらをもらえるかは、亡くなった方が会社員だったか自営業(国民年金のみ)だったかで決まります。
つまり、亡くなった方が会社員なら2階建て、自営業なら1階のみが支給される、というのが基本イメージです。
2. 遺族基礎年金の金額(2026年度)
遺族基礎年金は、子のある配偶者または子に支給される年金です。「子」とは、18歳到達年度の3月31日までの子(障害がある場合は20歳未満の子)を指します。
2026年度(令和8年度)の年額は次のとおりです(昭和31年4月2日以降生まれの場合)。
- 基本額:847,300円(昭和31年4月1日以前生まれは844,900円)
- 子の加算(第1子・第2子):各243,800円
- 子の加算(第3子以降):各81,300円
子ども2人を扶養する場合、基本額+子2人分加算で年額約133万4,900円(月額換算 約11.1万円)になります。子ども3人なら年額約141万6,200円(月約11.8万円)。これは令和8年度(2026年度)の最新値で、毎年4月に改定されます。
これはあくまで遺族基礎年金部分の目安です。あなたの世帯がいくら受け取れるかは、亡くなった方の年金加入状況や家族構成で変わります。
3. 遺族厚生年金の金額(会社員だった場合)
亡くなった方が会社員(または公務員)だった場合は、遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金が上乗せされます。計算式は概ね次のとおりです。
遺族厚生年金 ≒ 老齢厚生年金(報酬比例部分)の3/4
報酬比例部分は、亡くなった方の平均標準報酬額×加入月数で決まります。年収400万円・厚生年金加入20年の方を例にすると、報酬比例部分の年額は概ね40万円台、その3/4で遺族厚生年金は年30万円前後になります。
ただし、厚生年金加入期間が25年(300月)に満たない場合は、「短期要件」として加入期間を300月とみなして計算される救済措置があります。若くして亡くなった方の遺族でも、最低限の遺族厚生年金が確保される仕組みです。
受給額の早見表(目安)
子どもの数や年齢、加入実績で変わります。あなたの世帯の正確な金額は、年金事務所で具体的に確認してください。
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4. 死別と離別で大きく違う受給条件
シングルマザーといっても、死別と離別では受給条件がまったく異なります。
死別の場合
夫が亡くなった時点で婚姻関係があり、生計を維持されていれば、原則として遺族年金の対象になります。子どもを扶養していれば遺族基礎年金、夫が会社員なら遺族厚生年金も上乗せされます。
離別の場合(離婚後の元夫が亡くなった)
母自身は元配偶者の遺族年金を受け取れません(婚姻関係が切れているため)。ただし「子」は、生計同一でなくても遺族基礎年金の対象になることがあります。元夫から養育費が支払われていた・養育に関わっていたなどの実態があれば、子どもが遺族年金を受給できる可能性があるため、年金事務所で確認することが大切です。
子どもの18歳年度末で支給は終わる
遺族基礎年金の「子」は18歳到達年度の3月31日(障害がある場合は20歳)までです。それ以降は支給が止まります。長期間にわたる老後資金はカバーされない点に注意してください。
5. 中高齢寡婦加算と老後との接続
遺族厚生年金の対象になる人で、子のいない40歳以上65歳未満の妻、または子の遺族基礎年金が支給停止になった40〜65歳の妻には、中高齢寡婦加算として年額約61万円が上乗せされます(金額は毎年改定)。
また65歳以降は、自分自身の老齢基礎年金+老齢厚生年金が始まり、遺族厚生年金との調整が行われます。子どもが独立した後の生活費を考えると、自分の老齢年金額(老後の収入の柱)を増やしておくことが、結局は最大のリスクヘッジになります。
6. 遺族年金を踏まえた民間死亡保険の必要額
「遺族年金があるなら民間の死亡保険はいらないのでは?」と考えるシングルマザーも増えています。実際、遺族年金で受け取れる金額を計算したうえで、不足分だけを民間保険で補う設計にすれば、保険料を抑えながら必要な保障を確保できます。
必要保障額のざっくりした考え方は次のとおりです。
必要保障額 =(生活費+教育費+住居費)×残り年数 −(遺族年金+児童扶養手当+自分の収入+現在の貯蓄)
たとえば、生活費・教育費・住居費を月25万円、残り12年扶養すると総支出は3,600万円。これに対して遺族年金・児童扶養手当・自分の収入・貯蓄で2,500万円カバーできるなら、不足は1,100万円です。これが民間死亡保険の必要額の目安になります。
過剰な保険料は家計を圧迫します。遺族年金の受給見込みを正しく踏まえずに「とりあえず3,000万円」などの保険に入っていると、毎月の保険料がじわじわ生活を削っていく原因になりがちです。
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遺族年金は、申請しなければ1円も受け取れません。亡くなったあと自治体から自動で支給されるわけではない点に注意しましょう。
- 年金事務所または市区町村役場に相談:亡くなった方の年金種別を確認します。
- 必要書類の準備:年金請求書、死亡診断書のコピー、戸籍謄本、住民票、所得証明、預金通帳など。
- 請求書の提出:年金事務所(国民年金は市区町村役場でも可)に提出します。
- 支給決定通知:審査ののち、年金証書が届きます。
- 偶数月15日に振込:その後は年金として2ヶ月ごとに支給されます。
遺族年金の請求権は5年で時効になります。早めの請求が肝心です。
8. よくある質問(離婚・死別ケース別)
Q. 離婚して10年経った元夫が亡くなりました。子どもは遺族年金を受け取れますか?
受け取れる可能性があります。元夫が亡くなった時点で、生計を維持されていた「子」にあたるかが判断ポイントです。離婚後も継続して養育費が支払われていた、定期的な交流があった、扶養手続きをしていたなどの実態があれば、子の遺族基礎年金(厚生年金加入なら遺族厚生年金も)の対象になり得ます。年金事務所で相談しましょう。
Q. 内縁の夫が亡くなりました。受給できますか?
戸籍上の婚姻関係がなくても、事実婚関係が証明できれば配偶者として遺族年金の受給対象になります。住民票上の同居・生計同一の事実、第三者の証言などが判断材料になります。手続きは通常より時間がかかることが多いので、早めに年金事務所に相談してください。
Q. 自分の老齢厚生年金と遺族厚生年金は両方もらえますか?
原則として、65歳以降は「自分の老齢基礎年金+自分の老齢厚生年金」と「遺族厚生年金」を併給する形になります。ただし、選択する組み合わせ(自分の老齢厚生年金 vs 遺族厚生年金 vs 両者の差額)で支給額が変わるため、年金事務所で最有利になる組み合わせを試算してもらうことが大切です。
Q. 寡婦年金と遺族基礎年金、両方もらえますか?
寡婦年金は、亡くなった夫が国民年金第1号被保険者として10年以上保険料を納めていた場合に、60歳から65歳までの妻に支給される年金です。遺族基礎年金とは併給不可で、どちらか有利な方を選択することになります。受給期間・金額をシミュレーションしたうえで選びましょう。
9. あわせて確認したい関連記事
離婚後の年金や保険の整理は、いっぺんに考えるのが難しいテーマです。気になる記事から少しずつチェックしていきましょう。
離婚時の年金分割について確認したい方は関連記事『離婚後の年金分割とは?』もあわせてどうぞ。
保険全般を見直したい方は関連記事『50社比較で月々の保険料を最適化する方法』を参考にしてください。
10. 受給額が変わる「中高齢寡婦加算」の活用
遺族厚生年金を受給する妻が40歳〜65歳のあいだ、子の遺族基礎年金が支給停止になっている期間(子が18歳到達年度末を超えた等)には中高齢寡婦加算が上乗せされます。
令和8年度の中高齢寡婦加算は年額約61万円程度。会社員の夫を亡くして40代になった時点で、子どもが既に18歳を超えていると遺族基礎年金は出ませんが、中高齢寡婦加算で遺族厚生年金にこの金額が上乗せされる仕組みです。
そして65歳以降は自分の老齢基礎年金が始まるため、中高齢寡婦加算は終了して経過的寡婦加算に切り替わるのが一般的です(生年月日に応じて加算額が決まる)。長期の収入設計を考えるとき、この切り替えタイミングを把握しておくと家計が安定します。
最後に
遺族年金は、シングルマザーの家計を支える非常に大切な制度です。しかし、申請しないと受け取れない、請求権には時効がある、そして死別と離別で条件が大きく違うなど、知らないと損をするポイントがいくつもあります。
そして、遺族年金の見込み額がわかれば、民間の死亡保険に「いくらまで」入ればよいかも見えてきます。過剰な保険料を払い続けるよりも、必要保障額を正しく把握したほうが、毎月の家計はずっと軽くなります。
(出典:日本年金機構「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」、国民年金法、厚生年金保険法、厚生労働省)
運営者
FP相談1,200人以上の経験とWeb事業7年、自身の離婚・資産形成経験をもとに「ママ、大丈夫」を開発。年収200〜300万円のシングルマザーが、専門家に頼らず家計の未来を把握できるサービスを目指しています。

